Active Directory(AD)は、組織の認証・認可を担う中核基盤である。
そのため、攻撃者にとっても「侵入できれば横展開しやすい」最重要ターゲットになる。
本ページでは、専門ツールに依存せず、AD運用で最低限押さえるべきセキュリティの基本を、
「やること(対策)」「よくある落とし穴(事故パターン)」「確認の観点」まで含めて整理する。
(Tierモデル、PAW、特権ID管理、監査高度化などは別ページで扱う)
ADはアカウントが全ての起点になる。
「不要アカウントを減らす」「権限を分離する」だけで事故が減る。
- 退職者・異動者・不要アカウントは速やかに無効化する
- 共有アカウントは作らない(作るなら用途限定・期限付き)
- 管理者用アカウントと通常業務アカウントを分ける
- サービスアカウントは用途ごとに分ける(使い回さない)
- 退職者アカウントが放置され、侵入経路になる
- 「とりあえず作った共有アカウント」がずっと残る
- 管理者アカウントを普段使いして端末感染→AD全体へ波及
- 使われていないアカウントが棚卸しされているか
- “管理作業は管理アカウントだけ” が徹底できているか
ADの事故は「特権の漏洩」が致命傷になりやすい。
Domain Admins を増やすほど、攻撃者の当たりが増える。
- Domain Admins / Enterprise Admins は最小人数にする
- 日常作業と管理作業を分離する(アカウント分離)
- 管理作業は “必要な時だけ” 昇格できる形に寄せる(運用ルールでも可)
- 管理作業をする端末を分ける(最低でも「普段使いPCで管理しない」)
- 便利だから Domain Admins に入れてしまう
- 管理者がブラウザ・メール・チャットのPCで管理作業をしてしまう
- 特権グループのメンバーが説明可能か(なぜ必要か)
- “管理作業をする端末” が決まっているか
ADの標準認証。
時刻がずれると認証が失敗する(一般的に許容は5分以内)。
互換性のために残ることがある。
ただし利用範囲が広いほどリスクは増える。
- 時刻同期が崩れてログオン障害が起きる
- NTLMを広く許容し続けてしまう
- 時刻同期(NTP)が運用で監視されているか
- NTLMが必要な範囲が把握できているか
LDAP(389)は平文通信。
アプリ連携や機器連携が増えるほど、平文LDAPは攻撃面になる。
- 可能なら LDAPS(636)を標準にする
- アプリ連携(NAS/機器/Web)も LDAPS 前提に統一する
- 証明書(AD CS 等)とセットで運用する
- Simple Bind を平文LDAPで許可してしまう
→ 資格情報漏洩リスクが高い
- 証明書期限切れでLDAPSが止まり、アプリ認証が落ちる
- どのシステムがLDAPを使っているか一覧化されているか
- 証明書期限の管理がされているか
ADの設計が良くても、端末の管理が弱いと突破される。
- ローカル管理者を乱立させない
- 端末の設定をGPOで統一する(最低限でOK)
- DCや管理端末は特に堅くする(不要ソフトを入れない)
- ローカル管理者が大量に存在し、横展開が容易になる
- GPOが現場ごとにバラバラで、原因追跡ができない
- 管理者権限の端末配布が統制されているか
- GPOが“追加しっぱなし”になっていないか(棚卸し)
「守る」だけでなく「気づける」ことが重要。
DCのイベントログは最低限定期確認する。
- 重要操作がログに残る設定にする(運用ルールでも可)
- DCのイベントログを定期確認する(まずは週1でも)
- Security(認証失敗・特権利用の兆候)
- Directory Service(AD DS関連)
- DNS Server(SRV登録/名前解決の兆候)
- System(時刻同期・サービス停止・基盤障害)
- ログはあるが、誰も見ていない
- 異常に気づくのが「止まってから」
- “どのログを誰がいつ見るか” が決まっているか
- 異常時の連絡先・判断基準があるか
ADは「壊れたら終わり」にしない設計が必要。
- 復旧手順(誰が・何を・どの順で)を決めておく
- バックアップは定期実行する
- 復旧に必要な情報(構成/権限/証明書など)を文書化する
- バックアップはあるが、戻し方が分からない
- 重要な証明書や構成が属人化している
- “復旧できる” を一度は検証しているか(机上でも可)
- 復旧に必要な情報がWikiに揃っているか
ADセキュリティは、難しいことをやるより先に次を守る。
- 特権を絞る(Domain Adminsを増やさない)
- 管理用アカウントを分離する(普段使いしない)
- 通信を暗号化する(LDAPS)
- 端末とGPOで統一する(ばらつきを減らす)
- ログを見て気づけるようにする(Security/System/Directory Service/DNS)
- 復旧できる状態にする(バックアップ+手順)
この基本ができているだけで、事故の確率は大きく下がる。