本ページは、Active Directory を単に「ドメインが動作する環境」としてではなく、組織の認証・信頼・暗号化を担う中核基盤として設計するための構成方針を整理する。
AD DS(Active Directory Domain Services)は単体でも認証・認可基盤として成立する。
しかし、組織利用を前提とした場合、以下のような設計上の弱点が残りやすい。
本設計では、次の3要素を統合する。
これらを役割分離した上で連携させることで、
Identity / Trust / Encryption が揃った統合AD基盤を構成する。
本基盤の設計目的は以下の通りである。
単なる「構築完了」ではなく、設計理由を論理的に説明できる状態を維持することを目的とする。
この図は、AD DS / AD CS / LDAPS を別要素として分離しつつ、実際には DNS によるDC探索、Kerberos認証、証明書発行、LDAPS通信が
連携して成立していることを示している。
ポイントは次の通りである。
※ 図は概念構成を示すものであり、実環境では冗長化やネットワーク分離も考慮する。
AD DS は基盤の中心であり、以下を担う。
ユーザーがログオンする際、クライアントはまず DNS を利用してドメインコントローラーを探索する。
その後、Kerberos を利用して認証処理が行われる。
ただし LDAP 389 は暗号化されない通信経路であるため、AD DS 単体では通信保護の観点で不十分となる。
AD CS は内部PKIとして機能し、証明書の発行・管理・失効を統制する。
設計方針は以下の通りである。
これにより、次を実現する。
AD CS は単なる証明書発行機能ではなく、内部通信において「その接続先が本物である」と説明可能にする基盤である。
LDAPS(LDAP over TLS)はディレクトリ通信を暗号化する仕組みである。
仕様概要は以下の通りである。
LDAPS は AD DS 単体では成立しない。
AD CS により証明書が発行されて初めて実用的に機能する。
そのため LDAPS は、
AD DS と AD CS を接続する暗号化レイヤーとして位置付ける。
この状態でもドメインとしては動作する。
ただし、通信保護および信頼性の観点では検証用途レベルに留まる。
この段階で信頼基盤は成立する。
ただし LDAP 通信自体は暗号化されないため、設計としては未完成である。
この状態で初めて、
認証・信頼・暗号化が一体化した実運用水準の構成となる。
本設計では、構築だけでなく運用面も含めて次を重視する。
証明書管理は構築時だけで完結するものではなく、
セキュリティ設計の継続要素として扱う必要がある。
PKIを含むAD基盤は強力である一方、運用を誤ると影響範囲が広い。
主なリスクは以下の通りである。
CA停止
→ 新規証明書発行不可
証明書期限切れ
→ LDAPS停止、TLS通信失敗
CRL参照失敗
→ 証明書検証失敗、接続拒否
秘密鍵漏洩
→ 信頼崩壊
DNS不整合
→ DC探索失敗、認証開始不可
時刻同期異常
→ Kerberos失敗
したがって、
AD基盤は AD DS / AD CS / LDAPS だけでなく、DNS と時刻同期まで含めて一体の基盤として扱う必要がある。
AD DS は Identity。
AD CS は Trust。
LDAPS は Encryption。
さらに、DNS は Discovery、時刻同期は Kerberos 成立条件としての基盤である。
これらが連携することで、組織内の認証・信頼・暗号化が統合的に成立する。
本設計は単なる検証構成ではない。
再現可能で説明可能な統合AD基盤の基本アーキテクチャである。